文学散歩のつれづれに

休日の過ごしかたに「文学史跡めぐり」なるものがあります。年寄りの散歩、他人のことと思っていましたが、やってみると安上がりでなかなか楽しい。先月の幸田露伴「蝸牛庵」跡を皮切りに森鴎外邸跡の図書館、出張ついでに熊本に飛んで小泉八雲邸、林芙美子邸(山口文象設計である)と、このところかなり病み付きに。先週は立原道造記念館へ。そこは道造が旧制一高以来の青春を過ごしたという向ヶ岡弥生(東大裏、根津のそば)で、ちょうど開館8周年記念特別展「立原道造が求めた形象[かたち]自装詩集を中心として」(〜06/26)をやっていました。東大建築学科では辰野賞を三年連続で受賞し久米事務所に勤めるが24歳で亡くなる。十代で始めた詩作出版の一端を見せた展示ですが、そのタイポグラフィ(レイアウト、組版、造本)の構造のある美しさには驚かされました。
ついでに、隣接する弥生美術館の「高畠華宵描く麗人、中原淳一描く清らかな少女」というふれこみにつられ「大正・昭和女學生らいふ展…華宵、淳一の挿絵と吉屋信子の少女小説」にも足を伸ばしました。このところの「萌え」ブームも関係しているのか、イラストのタッチをかなりマニアに凝視する若い女性の熱気がありました。着物で訪れた人のスナップを掲示するコーナーもやはりマニアな感じ。来週出版予定のINAX BOOKLET『肥田せんせぃのなにわ学』でも大阪松竹少女歌劇が登場していますが、「萌え」は歴史を遡って考察する対象になりつつあるのかも知れません。
さて、隣接する東大工学部脇を通ると東京大学武田先端知ビルがガアーンと聳えていました。根津のしもたやとの落差、ショックも散歩の愉しみのうちと帰路 につきました。

参照ページ: 

『INAX BOOKLET 肥田せんせぃのなにわ学』

cover of 『INAX BOOKLET 肥田せんせぃのなにわ学』肥田晧三, 中野三敏, 澤田隆治, 桂米朝
発行・発売: INAX出版
年:
ASIN: 4872758323
製本: 単行本(ソフトカバー)
価格: ¥ 1,575 JPY

建築・都市ワークショップ編集。昭和5年、大阪ミナミのど真ん中・島之内生まれにして、大阪庶民文化史研究の第一人者・肥田晧三。肥田が文学少年として思う存分吸い込んできた、都市・大阪の最も華やかな時代の空気が、ラフィックや書物を通してよみがえる。