多摩美術大学の新しい図書館が正式にオープンした。ご存知の通り伊東豊雄さんの最新作。足元の細いアーチの列が曲線のグリッドをなす構造だが、その特徴は広がりを感じさせる空間にある。1階は通り抜けの出来るアーケードギャラリーとカフェ。ショウウインドウを間に挟んで、雑誌とDVDのブラウジングエリア。図書館というよりタワーレコードやHMVのメガストアを、目当てのタイトルを探しながら歩いているような雰囲気でもある。
実はこの図書館、建築デザインの斬新さだけではなく、図書館利用と読書経験をさまざまなインタラクション(しつらいと利用者のふるまい)から組み立てなおしている。
「本は大きさも重さもある」「読書するには本のページをめくる」「本を読むには明かりが必要」といった、当たり前といえば当たり前だが、建築計画では省みられることのないインタラクション。「図書館は本を資料にして創造する場が必要」「DVDは鑑賞するだけではなく駆け付け3杯、いや片っ端から早送りして多タイトルを検索」などなど、美大ならではの需要など、いわゆる公共図書館のやや自動化した図書館計画学では覆うことのできない利用形態を掘り起こした。
実は、筆者(鈴木明)はこのようなブラウジング環境、図書館ユーザビリティのコンセプトに関わった。以下、本書に紹介されているコンセプトのほんのさわりだけを紹介しよう…。
表紙が見える平置きの雑誌架(家具デザイン:藤江和子)は美大図書館の定番になるようなアイデアである。DVDのブラウジング環境は、バーカウンタ型の「メディアバー」と旅客機ビジネスクラスシート型の「メディアシート」。ミスマッチに見えるスタイルだが、それぞれ大量タイトルの視聴、全編ゆっくり視聴のニーズに対応するものだ。
2階は開架書架がならぶ閲覧室だが、その大部分は美術書を収めた低い書架がヘビのようにアーチの間に伸びている。書架天板はところどころが欠き取られ、ランプが付けられ、書架から取り出した(大型の)美術書のページを開いて読む(ブラウジングの)環境となっている。これは写本時代(本が貴重だった)の鎖付きの書架にヒントを得ている(写本室のような、実は大型スキャナを備えたラボもある)。
これら図書館閲覧のインタラクションを(「創造的図書館利用のてびき」と「図書館しつらいとふるまいの考古学」)にまとめている。と、自薦ばかりで恐縮だが、もちろん多彩な執筆陣の多角的な視点からなる、現代図書館のコンセプトも満載。おすすめのい書である。
![]() | 多摩美術大学図書館ブックプロジェクト 発行・発売: 鹿島出版会 年: ASIN: 430604484X 製本: 単行本 価格: ¥ 2,625 JPY |

