書評:図解 アトリエ・ワン

cover of 書評:図解 アトリエ・ワンアトリエ・ワン
発行・発売: TOTO出版
年:
ASIN: 4887062788
製本: ペーパーバック
価格: ¥ 2,730 JPY

アトリエ・ワンとは、建築家、塚本由晴と貝島桃代による建築事務所の名称である。その活動は、実際の建築設計だけではなく、展覧会に作品を出展し、活発な批評や地道な調査、そして教育を同時に行う。この本は、アトリエ・ワンが手がけてきた住宅を、ひとつひとつ「図解」したもので、建築を学ぶ学生にとっては、小住宅の空間構成や構造や材料、そしておさまりを学ぶことができる、建築入門の書、建築の教科書と言える。
さて、その図解の方法だが、特徴的なものは断面透視図(建物を垂直に切断し、各階を同時に見る)や平面透視図(屋根や床を取り去り、空から見下ろす)といったもので、さらに材料のテクチャー(特に壁に用いた合板の木目)や家の中で自由に振る舞う住人も描き込まれ、最近の建築家が用いる図面の図法としては、やや珍しいな、という印象を持った。その図法の印象は、どちらかといえば一般書や絵本や図鑑、たとえば『輪切り図鑑クロスセクション』(岩波書店)に近しい。読者は、あちこちに隠された仕掛けや空間(『クロスセクション』ではトイレだったが)を探し出し楽しむように、アトリエ・ワンならではのディテールや納まりの妙を堪能できる。
しかしながら、本書は教科書や一般書とすることだけを目指したのではない。著者が序文で「図解において細部を一つ一つ描き分けることは、人間がそれを見ることができたという達成の証であると同時に、人間の眼差しが対象に導かれたという証でもある」と述べるように、「図解」は、すでに建設され住人によって住まわれている作品をひとつひとつ、自己点検したことの結果なのである。
たしかに、ここに収められた「図解」は、住宅の設計や建設の過程で、アイデアを書き留めたスケッチでも、建築をつくるための図面(実施図面)でも、あるいは建築雑誌に発表するためのショウドローイングでもなく、本書のために新たに描き起こされたもののようだ(本書カバーの作成途中の図面アカ字をみればわかる)。
本書後半に収められた論文「住宅の振る舞い」では、都市に建っているアトリエ・ワンの住宅が、それを取り巻く環境との関係(そして住宅内部の空間との関係)を反映し、自律的に組織化を行う方法を詳述している。「図解」とパラレルに見える、言葉による自己点検だが、しかしその方法論はけっして、狭小の住宅に閉じこもるのではなく、「個々の建築を都市空間の実践に繋げるマイクロアーバニズム」と要約するように、逆に都市へのパースペクティブをも用意しているのである。
ところで、つかみ所のない都市を、ここに収められた住宅と同じように図解することは、はたして可能なのだろうか? しかし、本書に収められている大型の透視図から、建築写真や基本図面からでは理解しえなかった、内部空間のつながりやこまごまとした生活の関係が、いきいきと感じることができたではないか。それは手探りで都市を構成する小さな空間(と人の)「振る舞い」を図解するような作業となろうが、著者たちならそんな地道な方法を、やり遂げるかもしれない。そんなことを予感させる本である。

参照ページ

アトリエ・ワン屋上も豊作!

アトリエ・ワン貝島さんから、うれしい報告が届いた。ハウス&アトリエ・ワンの屋上を葉っぱで覆っていた琉球イモが穫れたという。

速評:アトリエ・ワン展

3/7、アトリエ・ワン展(ギャラリー間)のオープニング(遅れて到着)に行って来た。
http://event.telescoweb.com/node/6102